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「食する映画たち」4
 映画が描いた食には、もっと毒のあるもうのある。ピーター・グリーナウェイ監督の『コックと泥棒、その妻と愛人』のように、人の肉体そのものが食卓に上るようなグロテスクなものもあった。ルイス・ブニュエル監督の『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』のように、トラブルつづきでいつまでたっても食にありつけない金持ちたちをコメディタッチで描くものもある。ブニュエルはこの映画で、晩餐の椅子をみんな便器にかえていた。シュールリアリストの本領発揮である。けれど笑えても、食欲をそそるような作品では、残念ながらなかった。
 もう一つ、記憶に残る強烈な食のシーンがある。『暴力脱獄』で囚人役のポール・ニューマンが、仲間同士の賭で茹卵を50個食べる場面だ。もうテーブルにかしこまっていては口に入らなくなり、まず歩きながら食べる、最後にはベッドにあおむけになりむりやり口に押しこみ、とうとう50個を平らげてしまうのだ。そういうとんでもない食い方にもかかわらず、なぜか子どものぼくは、無性にゆで卵が食べたくなったのだった。
 卵といえばソフィア・ローレン主演の『ひまわり』で、大きな器に卵を30個ばかり割って入れてかきまわすシーンがあった。昭和30年生まれのぼくは、卵が高級品であるというイメージがぬぐいされず、そのシーンがとても贅沢に感じられたものだ。
つづく
嗜好571号 (2004/5月)掲載


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